桜縁
「笑わせるな。お前があの娘に協力していることは分かっている。あの娘は何処だ?」
「さあね、何処に行ったか分からないし、分かってても、あんたに教えてやる義理はないよね。」
「ごもっともなご意見だ。逆らわなければ、死ぬこともなかっただろうに……。」
兵士達が刀を構え直す。沖田も握る刀に力をこめる。
「あの時は、油断しちゃったけど、今度は手加減しないよ……?」
「哀れみは受けていた方が、賢いと思うがな……?もはや、お前は立っていることすら、ままならないはずだ。早く口を割って楽になったらどうだ?」
「残念だけど、僕はしゃべるつもりはないし、やられてやる気もしないから。かかって来なよ。まとめて片付けてあげる。」
「………やれ!!」
合図と共に後ろで待ち構えていた、兵士達が沖田へと襲い掛かる。
沖田は容赦なく次々と斬り伏せていく。
しかし、戦いは長くは続かなかった……。
「ゴホッ!!……ゴホッ!ゴホッ!!」
沖田は激しく咳込み、血をまた吐いてしまう。全身が痛くて、たまらない。思わず膝をついてしまう。
「ゴホッ!ゴホッ……!!」
「やはり、無理だったようだな。」
「はあはあ………!」
荒く息をしながら、目の前にいる者を見据える。視界がボヤケ始め、上手く姿が見えなくなっていた。
沖田はなおも立ち上がろうとするが、すでに決着は着いていた。
「うわっっ……!」
立ち上がろうとした沖田の背を、兵士から蹴倒されてしまう。
その反動で刀が手から離れてしまう。
「くっ……!」
それでも沖田は、刀に手を伸ばそうとするが、それを阻止するように、兵士達の頭が沖田の手を踏み付ける。
「うっ……!」
「その勢きだけは認めてやる。さっさと娘の居場所をはいて、楽になれ。」
「……いやだね……。あの娘と引き換えにするぐらいなら、お前の戦っていたほうがましだ。」
「口程を知らぬ奴が……!!」
「うっ!!」
頭は沖田の手を潰すようにして踏み付ける。沖田はその痛みをこらえる。
「こいつの首を跳ねてしまえ!!」
兵士が沖田の背後へと近づく。
しかし、振り上げられた刀が、沖田を貫くことはなく、その逆に兵士の身体に刃が突き刺さる。
兵士はそのまま絶命してしまう。
その後ろにいたのは、逃げたはずの月であった。
「……月ちゃん…。」