桜縁
さすが大人である。ちゃんと空気を読んでいた。
それに引き返え、空気を読まなかった二人は……、
「つまんねぇこと言ってねぇで、さっさと出て行けーーーー!!」
と、もろに土方の雷を喰らっていた。
なんとも哀れとしか、言いようがない。
「はぁーー……。しょうがねぇな本当に……。」
呆れてため息をつく原田。後は原田に任せておいたほうがよさそうだ。
「じゃあ、僕はしばらく部屋で休むから。頑張ってね。」
原田の肩をポンと叩くと、沖田はその場から去って行った。
沖田は自分の部屋へ行く途中の部屋で、ちょうど部屋から出てきた近藤と出会う。
「近藤さん?」
「おお!総司か…!よく戻ったな。お前達の働きはトシから聞いてるぞ!だが、大変な目にあったようだが……、お前は身体の調子は大丈夫なのか?」
「ええ、大したことはありません。それよりも近藤さんはここで何をしていたんですか?」
「なにって、彼女の看病に決まっとるだろ?」
「看病……?」
「お前を命懸けで助けてくれた娘さんだからな!しっかりと治してもらわんといかん。」
満足感に言う近藤。本当に誰に対しても、優しいのだ。
それに誰でも良いと思ったものは、動物であろうと人間であろうと、受け入れてしまう度量を近藤は持っていた。
そんな近藤だからこそ、皆が慕うのだ。
もちろん、沖田も例外ではない。
「……はい、そうですね。会ってもいいですか?」
「ああ、それはかまわん!会ってやりなさい。ちょうど目を覚ましたところだ。」
障子を開けて中へと入ると、青白い顔をした月が沖田の方を見た。
「………沖田さん?」
「調子はどうなの?」
「はい、だいぶいいです。すみません……。ご迷惑をおかけして……。」
「気にしなくてもいいよ。僕も君に助けられたんだ。助けるのは当然のことだよ。」
「……さっきの方、近藤さんとおっしゃいましたけど、とてもいい方ですね。」
「うん、とってもいい人だよ。この浪士組を束ねる人だからね。」
「ここに沖田さんもいるということは、捜していた方とも会えたのですね?私も少しはお役に立てて良かったです。」
「………!」
うっすらと微笑む月。その笑みに一瞬見惚れてしまう沖田。
「君も早く見つかるといいね。」
「……はい。」