桜縁


「……君達は彼らが彼女を逃がしたという証拠があって、そんなことを言っているのかい?」


「……!」


「桂様?」


「証拠もなしに疑ってはいけない。もし、彼らが彼女を逃がしたのなら、それこそ敵の思う坪だ。新撰組は我らの懐の者ではないからね……。」


つまり、新撰組がワザと月を逃がしたのなら、新撰組にとっては桂達を居させる理由が無くなると言うことだ。


会津に招かれたとはいえ、新撰組はまた別だ。口封じに桂達を殺すことなんて意図はないだろう。


下手に手だしをするわけにもいかないのだ。それに新撰組がやってないという証拠がある限りは追求をするのは無理だ。


「とりあえず、彼女の行方を探すのが先だ。女の足でそう遠くまでは行けない。すぐに後を追うんだ。手荒な真似だけはするな?」


「はい!」


「私は近藤さん達に会うとしよう。何か分かるかもしれない。」


「はい。」


それぞれに別れ、桂達は調査に乗り出した。






そのことは新撰組も想定内であった。


すぐに来るであろう桂を待つ近藤達。芹沢達にはしばらくの間、遊郭に行ってもらっていたため、こちら側は大きな騒ぎとはなっていなかった。


「………月、ちゃんと逃げられたかな?」


俯きながら平助がぼやく。脱出出来たとはいえ、たった一人で山越えをするのだ。その間に何があってもおかしくはない。


「………。」


「大丈夫だ…。あいつは刀が使えるんだ。下手なことにはならないさ。」


「なら、いいけど……。」


「あそこら辺は人買いがうろついてるって、噂になっていたが……、まさか遭遇してねぇよな……?」


「………。」


黙り込む面々。連絡が取れないだけに、不安が募るばかりだ。


「監視されてたんだ。仕方がねぇだろ……。」


監視の目を盗んでわずかな時間で、月を逃がしたのだ。これ以上気を揉んでいる場合ではない。


そこへ桂がやって来る。


「失礼致します。入ってもいいでしょうか?」


「……どうぞ、御入り下さい。」


近藤が許可を出し、桂とその部下が中へ入って来る。


「何か御用ですか?」


「御用と言えば、御用ですね。こちら側が騒いでいるのに、皆さんは随分と静かなのですね。」


「今は会議中だ。静かにするのは当然では?」


「それはごもっともだ。ですが、身内が居なくなったのですから、もう少し騒いではいかがですか?」
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