桜縁




障子が開けられ中へと入ると、それなりの身分の格好をした沖田がいた。


やはり各の違いと言うものを感じてしまう。


月は蛍と共にその場に座った。


「ご機嫌いかがですか 沖田様。」


「悪くありませんよ。それよりもご用件は?」


「今日新しく入りました侍女を紹介しようと思いまして……。」


「月と申します。」


身内だとはバレないように、あたかも初対面のフリをする月。


それが分かったのかにこりと沖田笑う。


「始めまして、僕は沖田総司です。これからよろしくね月ちゃん。」


「それでこの者を沖田様専属に当たらせようかと思います。」


「!?」


「私にはすでに侍女がおりますし、この者が私達の良い懸け橋となってくれるとは思いませんか?」


つまり蛍は始めから、こうするつもりだったのだ。夫が寄り付かないのなら、侍女を使おうということだ。


「それは有り難いですね。なら、そうさせてもらいます。」


「では、私はこれで……。」


月をその場に残し、蛍は去って行った。


突然のことで言い返す暇もなく、呆気に取られる月。


沖田の専属の侍女で、懸け橋ということは………。


月は沖田の方を見る。


「何その面白い顔?呆けてるよ月ちゃん。」


クスクスと笑う沖田。それを見てようやく、思考が戻ってくる。


「いったいこれはどういうことですか?奥さんなら、自分で来ればいいのに……。」


「そう言わないの。身分が高い女性なんて、そんなもんだよ…。」


「そうなんですか?」


「そうそ。で、君の話し。」


「?」


「なんでこんな所にいるの?」


「逃げる途中に、奴隷商に捕まったんです。」


「結婚が嫌で抜け出したってわけか。」


こくりと頷く月。


沖田もどこか安心したようだ。


「ま、あんな奴らより、僕と夫婦になった方がいいに決まってるしね。」


「!」


い、今とんでもないことを聞いたような……。


「こんな時に冗談はよして下さい…!笑えません!」


ぷいと顔を逸らす月。


「え~~、僕は本気なんだけどな。」


残念そうに目を細める沖田。まったく洒落になっていない。


とにかく沖田が元気そうで何よりだ。


「ところで沖田さんは、日頃何をされているのですか?」


長州藩主の婿となるのだ。剣以外にもやることがたくさんあるはずだ。


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