桜縁
「特に何もしてないよ。ここだと剣の稽古も出来ないからね。」
ごろんと横になって天井を仰ぐ沖田。本当に暇のようだ。
「蛍さんの所に行かなくても大丈夫なんですか……?」
「行って欲しいの?」
「あっちが本命ではないですか。」
「あ~……、そうだね。」
手をヒラヒラとさせながら答える沖田。新撰組のための戦略結婚。
いたしかないとはいえ、やはり胸が痛い……。
「外に行こうか?」
「え……?」
「久しぶりに外の空気を吸いたいし、使用人がいれば、出歩いても大丈夫だからね。」
起き上がりにこりと笑う沖田。そくさくと着物を脱ぎ始める。
「ち、ちょっと待って下さい!私、外に出ますから……!」
「いいよ 別に。」
全然良くないです…!
沖田はそんなことはお構いなしに脱ぎ、月は後ろを向いて、両手で顔を覆うしかなかった。
「はい、じゃあ行こう!」
「!」
ガラリと障子を開け、月の手を引っ張りながら、沖田と月は外へと出かけた。
久しぶりに出かけた町は、賑わいを見せていた。これなら、長州の者や会津の者達に会っても、見つかることはないだろう。
沖田も屯所と同じ格好をしていて、上手く町人の中に紛れていた。
「すごい賑やかですね!」
「君と出会った時も、こうして町を歩いたよね。」
あの時は兄の史朗が気掛かりで、ゆっくりと町見物している余裕などなかった。
「月ちゃん、こっちこっち!」
「あっ……!」
その思考を打ち消すかのように、ぐいぐいと腕を引っ張りながら先へ進む沖田。
まるで小さな子供のようだ。
「ほら見て!」
とある店先の前で立ち止まり、視線を写すとそこには綺麗な飾りがいっぱい置いてあった。
「……綺麗…。」
思わず見惚れてしまう美しさだ。
「これ、月ちゃんに似合うんじゃない?」
「え……?」
沖田は店先に置いてあった飾りを、月の着物の帯に差し込む。
飾りが小さく揺れる。
「うん、可愛い似合ってる!」
「そうですか?」
飾りに手をやり、飾りの装飾を確かめる。キラキラと光っていてとても綺麗だ。
「でも、こっちの方が似合うかな?」
いろいろ手に取って見比べる沖田。
すると、今度は向こうの方で、何かをやっている音がする。
「……行ってみようか?」
「はい!」