理想の男~Magic of Love~
「楽しかった?」

そう聞いてきた藤に、
「――はい…」

私は首を縦に振ってうなずいて答えた。

藤は私が言ったことに満足したと言うように笑うと、首を縦に振ってうなずいた。

笑ったとたん、彼の頬にえくぼができた。

まさか、えくぼまでが私の好みだなんて…。

そんな細かいところにも、私は自分の理想を見つけてしまった。

藤は長身の躰を屈むと、サックスを足元の黒いケースにしまった。

「いつもしているんですか?」

今度は私が問いかける番だ。

何故だかよくわからないけど、もう少しだけ一緒に藤と話をしていたかった。

「月1で、こづかい稼ぎ程度に」

藤が答えたのと同時に、パタンとケースのふたがしまった。
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