理想の男~Magic of Love~
「サックス、できるんですね」

私は藤に話しかけた。

「高校の時、ジャズ同好会って言う部活に所属していたんだ」

それに対して、藤が答えた。

「ジャズが好きなんですか?」

私の質問に、
「他に入りたい部活がなかったからな」

藤が答えた。

そして、私たちの間に沈黙が流れた。

今の…完全に一問一答、ってヤツだよね?

そう思っていたら、藤がケースを持ちあげた。

「――藤さん!」

このまま藤に帰って欲しくなくて、私は思わず彼を呼び止めた。

「“藤”」

呼び止めた私に、藤はこう返した。

「えっ?」

どう言うこと?

戸惑っている私に、
「“さん”はいらない、呼び捨てでいい」
と、藤は言った。
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