【B】星のない夜 ~戻らない恋~

33.親友が家族を失った日 -怜皇-


三月上旬。


プロジェクト成功に伴う解散で、
最後の打ち上げを行った夜、俺は何時ものように
近衛を部屋へと招いた。



近衛との時間もきっぱりと清算して終わりにしよう。




近衛と過ごす時間が、俺にとって穏やかなものだった事実も確かだし、
安らぐことが出来たのも確かだった。



だけど俺には婚約者がいる。




俺の父親は、養母と言う婚約者の存在が居たにもかかわらず
俺の実母と恋に落ちて、実母は俺をこっそりと産み落とした。


一人で育てるのを覚悟して。


だけど養母との間に子供に恵まれなかった父は、
俺を瑠璃垣の後継者として、瑠璃垣の家に招き入れた。





何時の間にか……俺は、父親と同じことをしていた。
一族に反発しているように思えて、軽蔑していた父親と同じことをしていた現実。




彼女が瑠璃垣の屋敷に入ってきたばかりの二年前とは今は違う。

少しずつ、咲空良に惹かれていく俺自身も存在して……
これ以上は、咲空良を裏切り続けることも出来ない。


そんな風にも思えた。




だからこそ、ホテルに迎え入れて、手切れ金を渡して
きっちりと関係を清算しようと思った。





噂として耳に届いてきた、養母の企みを阻止するために。




都城家との縁談を今も反対し続ける養母。

そして……俺と近衛のホテル内の写真をちらつかせて、
近衛を手駒として使いだした。

そんな噂すら、届いてくる。




今は養母が下手に出ていて、近衛が握っていると思っているかもしれない。
だけど、養母にとっての近衛の存在は、あくまでも使い勝手のきく人形でしかない。




だからこそ、養母の魔の手から守るためにも
清算することが、お互いの為だった。





清算するために招き入れたのに、部屋に入った途端
理性では制御しきれなかった本能が、彼女追い詰めようと意識を駆り立てる。


壁際まで押し付けて、いつもより激しく彼女を貪り続けるキス。


そのまま指先は、彼女のブラウス上から双丘の突起を刺激する。
その度に、甘い吐息を吐き出す彼女。




「怜皇……さま……」




俺の名を呟いた声に、今一度失いかけた理性が顔を出す。


慌てて乱れた彼女のブラウスをなおして、彼女から離れる俺に
「嫌っ」っと彼女は俺の手をきつく掴み取った。




「ずっと……お慕いしてました。
 学院のダンスパーティーの時から」


「君も神前悧羅が母校なのか?」




近衛の突然の言葉に、俺は悧羅学院の生徒を必死に思い起こす。
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