【B】星のない夜 ~戻らない恋~

37.繋がった夜 - 咲空良 -



心【しずか】の葬式が終わって暫く、
私はショックからか日中は動くことは出来ても
夜になるとベッドから起きれない時間が続いた。


あんなに苦しみ続けた闘病期間。


心【しずか】の体は、筋肉も落ちて細くガリガリで薬でボロボロになった骨は
火葬しても崩れてしまうほど脆くスカスカだった。


睦樹さんが最期にさした口紅の明るさだけが、
やけに印象に残ってる。



怜皇さんはと言えば、心【しずか】の葬式の翌日からすでに仕事に奔走してる。
だけどその合間合間に睦樹さんや私の為に、時間を作りだしてくれているのも確かだった。


心【しずか】が旅立った後も睦樹さんは、
心【しずか】の両親の養子として会社を守りながら生きていくことを決めたのだと
怜皇さんを通して知った。



そんな親友の未来を守りたいと、彼が受け継ぐ会社とよりよいビジネスパートナーになれるようにと
新しいプロジェクトの為に慌ただしく過ごしているようだった。



願いを受け入れさせるには口だけではなく、
怜皇さん自身の実績と評価も必須だった。


実力のない飾りだけのトップについてくる存在はいない。

それを知って、素直に応援したいと思う私も存在する。



だけど……本当はね。
心が弱っている今だからこそ貴方に……傍に居て欲しいのよ。


毎日のように夜にかかってくる電話だけじゃ寂しいの。
お休みコールのメールだけじゃ、この空っぽの心は満たされないの。

こんなにも……貴方に惹かれてる私が存在したなんて自分でもびっくりしてる。




『私、寝たわよ』




そうやって告げられた葵桜秋の言葉。



葵桜秋がここ暫く、
アクションを起こしてこないことも心配だった。


かと言って、葵桜秋に電話をする勇気もない。





寂しさを紛らわすように心【しずか】の遺品整理を理由に
毎日のように廣瀬家へと向かって、
心【しずか】が残したビデオレターを整頓したり、PCで編集したりと
残された仕事沢山あった。


睦樹さんが仕事の時間は、紀天の育児も積極的に手伝った。


心【しずか】が居なくなって気落ちしている睦樹さんに、
少しでも元気になって欲しくて、晩御飯も必死に作る。


そんな晩御飯を時間の許す限り、一緒に取るようになってくれた
怜皇さんの行動には正直驚きを隠せなかったけど、
そんな時間が一つずつ増える度に嬉しかった。


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