【B】星のない夜 ~戻らない恋~


怜皇さんの隣、一歩後ろをついて歩きながら
次から次へと挨拶についてまわる。


ようやく解放されて、心【しずか】の元に辿りつこうとするものの
今度はフローシアの同級生たちに囲まれて動けない。



同級生たちは突然、ふってわいたような
『瑠璃垣の継承者候補との、婚約発表』の話題ばかり。


立ち尽くしてしまっているところに、
また葵桜秋が助け船を出してくれる。



「皆さん、式場の方に少しずつ集まってくださいって。
 あちらに神前悧羅の方々もいらっしゃいますわ。

 姉も心【しずか】さんに会いに行きたそうですので、
 そろそろ、解放してくださいませんか?」


葵桜秋が声をかけると次々と私を囲んでいた同級生の群れは
遠のいていった。


ようやく辿りついた控室。


廣瀬家、新婦控室。
純白のウェディングドレスに身を包む
心【しずか】は嬉しそうに微笑みなが招き入れてくれた。



マーメイドライン的なラインのドレスを
選ぶものとイメージしていた心【しずか】のドレスは、
ロイヤルウェディングを想像させるデザイン。



パロック美術の刺繍をあしらったヨーロピアンテイストが満載の
後ろ姿も豪華な一着。



「びっくりしたでしょ」


スムーズな言葉が出てこない私に心【しずか】が先に話しかけてきた。



「えぇ。
 想像してたドレス姿とは違ってたけど、
 心【しずか】本当に綺麗」


心【しずか】の花嫁姿を見ながら
遠い将来、私も怜皇さんと行うことになるであろう結婚式。


その時、私はどんなドレスを着て彼の傍に立つんだろう。



式の間も、披露宴の間も隣同士で怜皇さんとは時間を過ごすこともなく
私は新婦の友人としてその時間を楽しんだ。



緊張の披露宴でのスピーチも終わって、
盛り上がっている中、行われたブーケプルズ。


選び取ったリボンの先には素敵なブーケ。



幸せのブーケが腕の中におさめられた私。



披露宴も無事に終わり、二次会の会場へと向かう途中、
背後から近付いてきた怜皇さんにひそひそと声をかけられた。



「咲空良、最上階のいつもの部屋を抑えてる。
 今日はゆっくりして帰ろう」



突然のお誘い。


今日は不安の中でも、少し嬉しさが大きかった。

心【しずか】の花嫁姿を後だから?
受け取ったブーケの力?




「……はい……」


小さく答えると、怜皇さんは友達の方へと慌ててかけていく。



怜皇さんがいなくなった私の傍、
何時ものように隣に並んだ
葵桜秋は、私の方を真っ直ぐに見つめた。




「お姉ちゃん大丈夫。話は聞いたから。

 私も予想してたから、何時もみたいに部屋はおさえてる。
 お姉ちゃんは、そこで休んで。

 タイミングで来てよ。

 私は二次会、顔だけ少し出して先にホテルの部屋に居るから。
 着替えて入れ替わるだけにしておくから」



葵桜秋の優しさに少しの悲しさを覚えながらも
拒絶することも出来ず、最初に私が望んだことだからっと
入れ替わりを受け入れた。



ちょっぴり前向きに思えたその日、
だけど現実は上手くめぐってくれない。
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