【B】星のない夜 ~戻らない恋~




「本当に?」





何時もならそんなこと
聞き返しもしないのに
余裕がなくなってる私には
さっきの「赤ちゃんが欲しい」って
言いだした咲空良の声が頭から離れない。




「嘘言ってどうするの?

 でもね……葵桜秋」




改まって、ゆっくりと会話を切り出そうとする咲空良。


咲空良が何かを強く決意した時、
少し溜め気味に話し出すのは特徴で、
その間がさらに不安を掻き立てて
私は言葉を封じるように紡ぎだした。




「じゃ、咲空良。

 また怜皇さまが帰ってくるときには連絡待ってる。

 私は貴女の為にやってあげてるの。
 貴女が望んだことだもの。

 赤ちゃんが欲しいだなんて今だけよ。

 夢を見るのもたいがいにしたら?

 咲空良は怜皇さまの何もわかってない。
 
それに……咲空良が気になる
 怜皇さまを引き出したのは私よ。

 私が居なければ、今も咲空良は
 怜皇様と会話一つスムーズに出来てないわよ」




怒涛のように浴びせた電話。




自分が言いたいことだけ伝えて
一方的に電話を切る。



呼吸が荒くなる。




どうして?




いつもは優位に立ててた咲空良との関係に
どうしてこんなに敗北感を感じるんだろう。






咲空良と葵桜秋の狭間に
今も出口はないまま。







わかってるのは只一つ。



貴女の好きにはさせない。






望み通り……
貴女の全てを奪ってあげる。




貴女を全てを私に……。





それが幼い頃から
貴女が私に望み続けたことだから。
< 90 / 232 >

この作品をシェア

pagetop