音匣マリア
ナビに従って駐車スペースを探し、そこに車を停めた。


店は渋谷駅にほど近い場所にあった。


ビルの1階に入ってるその店は、開店してからまだそんなに日は経っていない。


ガラス張りのショーウィンドウを素通りし、押し扉を開けて店内に入った。


ショーケースが並ぶ店内を物色し、目当ての物が陳列されているコーナーへと向かう。


「お探し物ですか?」


店員がうざったく声をかけてきた。

一人で選びたい俺は曖昧に返事を返し、言外に一人にしてほしい意思表示をする。


商品を見て、幾つかに絞った。


……これが良い。




最終的に自分が気に入った物を菜月へのプレゼントに購入し、店を去る。


問題は、これをいつ菜月に渡すか…なんだけど。




クリスマスにブライダルフェアか…。




中井さんなら、頼めばなんとかしてくれるかも知れない。



今から高速に乗れば、中井さんの店のオープンにも間に合うはずだと踏んだ俺は、急いで高速への道を飛ばしていた。









「あ?ナイトフェア?ナツんとこの式場のな。確かに今回は俺が頼まれたけど」



やっぱり、フェアのフレアショーは中井さんに依頼してたのか、菜月の式場は。



「それ、替わって貰えませんかね?どうしてもクリスマスには菜月に逢いたいんで」



はあぁ、と溜め息をついた中井さんが煙草に火を点ける。俺もそれにつられて1本取り出し、口に咥えた。




場所は中井さんの店の中。




都心から高速に乗って帰った俺は、そのまま中井さんの店に寄って開店前に中井さんを掴まえた。



「お前ね…大会で優勝してちっとはマシになったかと思えば……。まあ、替わるの自体は構わねぇけどよ」

「じゃあ、替わって下さい。クリスマスには菜月とラブラブしたいんで」



今の状態の菜月とラブラブなんてほど遠いけど、そうなれば良いと言う期待を込めてそう言った。



「……だけどな、ナツとお前は拗れてるんじゃなかったのか?瀬名さんまでが知ってたろ?それにお前、先月ずっと荒れてたじゃねぇか」



確かに先月中、俺はずっと荒れてた。


事務室に酒を持ち込んで従業員には八つ当たりしまくったし。つーかそれ、見てたなら止めろよ。


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