音匣マリア
大学時代の先輩だった瀬名(せな)さんに憧れて、俺がこの世界に入ったのは、もう4年も前の話だ。

今では一つの店を任される程信用されているし、腕もそれなりに磨いたと思う。



瀬名さんはソムリエの資格を取り、今ではそのテの店舗を3つも展開している、中々の遣り手であると言えるだろう。



ただ、瀬名さんとは違い、俺はソムリエよりバーテンの方の道を選んだ。バーテンダーの方が、見た目のパフォーマンスに花があったし、稼ぎがよかったから。



一応俺の両親は健在だが、たった一人の姉は病弱で心臓に持病を抱えている。


その治療費も馬鹿にならないから、俺は一人暮らしをして自分の事は全て自分でやってきた。

何より病弱な姉や両親に、これ以上の負担はかけたくない。


できれば姉さんの治療費ぐらいは出してやりたい。



そして、心臓に軽度の疾患を持つ姉さんの通院費を稼ぎつつ、瀬名さんの近くにいられるバーテンダーというこの仕事は、絶好のポジションだろう。

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