浮気は、いいよ。
ソファに向かって歩いてくる優里が、棚に飾ってあったオレたちの写真に目を留めた。
優里は立ち止ってフォトフレームを手に取ると、おもむろにデータを消去した。
「優里、何で!!?」
慌てて優里に駆け寄る。
「もう、いらないでしょ」
優里が目に涙を浮かべながら、それでも笑って言った。
その涙は何の涙なの??
悲しくて?? 悔しくて?? 赦せなくて??
優里の涙の意味は分からないけれど、とりあえず消された写真のデータはパソコンに残ってるはず。
胸を撫で下ろす。
目を離してるすきに、優里はフォトフレームの隣に飾ってあった結婚式の写真を写真立てから引き抜くと『くしゃり』手のひらで丸めた。
さすがに結婚式の記念撮影の写真のデータは持っていない。
「優里!!」
優里の手から写真を取ってしわを伸ばす。
・・・・・ダメだ。 くしゃくしゃだ。
「何でだよ!! オレらの大事な思い出だろ!!?」
思わず大きな声を出してしまった。
「・・・・大事じゃないでしょ?? 大事なんかじゃないよ、幸太郎。 ちゃんと全部捨てよう。 もういいんだよ、幸太郎。 こんなもの、大事にしなくていいんだよ。 新しい写真を飾ればいいんだよ」
優里の瞳から、ついに涙がこぼれた。
「ごめん。 ごめんな、優里。 ごめん」
ただただ、謝ることしか出来なかった。
「・・・・でもオレ、人生で1番幸せだった日の写真、やっぱ捨てらんない」
俯きながら、しつこく写真のしわを伸ばし続けるオレに、優里が泣きながら笑いかけた。
「・・・・きっとすぐ、その写真は『人生で1番幸せだった日の写真』じゃなくなるよ。 その時、忘れずに処分してね」
断言出来る。
人生で1番幸せな日は、一生来ない。