それだけ ~先生が好き~
放課後残ってピアノの練習をしていた晴香は、戸締りに来た先生と会ったんだって。
最近どうだ、また天井に穴開けたりしてないか?なんて、笑って聞いてきた先生。
伴奏やるの?すごいじゃん、頑張れよって言ってくれたって、晴香は大喜び。
晴香は急に思い出したように言った。
『あとね、ゆきのこと言ってた。仲良くなったんだなって』
それだけで心臓がドキッとする。
・・・先生は何を思いながら私のことを話したんだろう。
もう先生にとっては終わったことなのかもしれない。
別れ際に言った『大好き』には、もう限界が訪れたのかな。
私は一生想い続けるけど。
もう後ろから見つめることしか出来ないけど・・・。
それでよかったのに。
後悔ばかりする自分が大嫌い。
これ以上電話をしているのも辛かった。
晴香の声が頭の中で何度も再生されてく。
嬉しかったとか、また話したいとか、そういう喜びが電話から伝わる。
電話を切ってから、また泣いた。
いつになったら、ちゃんと笑えるようになる?
先生がそばにいないシアワセなんてあるの?