それだけ ~先生が好き~
「・・・あ、城田・・・えっ??なんで城田がいるの?」
俺の願いが通じたのかなんなのか、振り向いて驚いた顔をしてる今井。
あぁ、やっぱ泣いてたんだ。
まだ、頬に涙のあとが残ってる。
「ん~、かばん取りに来た。俺もお前いてびっくりしたし」
「あはは、そっか。わ~、今日も派手な格好!!」
笑いながら俺の腰に下げられているチェーンをじゃらじゃらと触る。
そいういうなんでもない仕草のせいで、俺の心臓がうるさくなる。
「派手かぁ~??普通じゃね?あ、今日のTシャツかっこいいべ!」
照れているのがばれないように、なるべくいつもの俺を装う。
心の中は大嵐だっていうのに。
本当は泣きてぇよ。
お前抱きしめて、泣き崩れてぇよ・・・。
好きなんだな、松戸が。
何か・・・悩みがあるんだな。
俺にはどうしようも出来ないことがあるんだな。
窓の向こうでボールを遠くまで飛ばしている松戸を、初めてうらやましく思った。
入学以来、何度も説教されたり、呼び出されたりして、関わりの深い教師だった。
でも、嫌いじゃなかった。