† Lの呪縛 †
ティーカップをソーサーの上に乗せ、ダグラスは可笑しそうに静かに笑みを漏らした。



「こうして二人で話をするのは初めてだね」

「はい、そうですね」

「そう緊張する事はない。 私がここに来た理由は分かるね?」

「……オリヴィアの事ですよね?」



ダグラスはソファーの背凭れに寄りかかり、膝の上で指を組んだ。


アレンの目を真っ直ぐ見据え、口を開く。



「全て忘れてもらいたい」

「……ヤードに話をして犯人を捕まえるべきです」

「その必要はないんだよ」

「何故ですか……?」

「君が理由を知る必要はないだろう? 好奇心を持つ事は良い事だが、時にそれは身を滅ぼす事に繋がるという事を覚えておいた方がいい」



ダグラスの柔らかな雰囲気が一変し、鋭く威圧的な雰囲気になる。


アレンは拳をグッと包み込み、ダグラスの雰囲気に呑み込まれない様にと気を張っている。



「私は妻も子供達の事も愛しているよ。 アレン、君はどうかな? 全てを喪う日がくるなどと考えた事は一度もないだろう?」

「…………」



ダグラスが言わんとする事が何なのか察したアレンの額に、冷や汗が滲む。



「忘れてくれるのならば、今までどおりの関係でいたい。 だが、そうでないのならば……分かるね?」

「…………」



選択肢など、ある様でないものだ。


アレンの答えは初めから決められている様なものだった。





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