† Lの呪縛 †
「……分かり、ました。 あの日の事は全て忘れます」

「ありがとう」



ダグラスは立ち上がりシルクハットを被った。



「あの……」



アレンが、ドアに向かって歩くダグラスを呼び止めた。


ダグラスは腰を捻り、アレンへと視線を向けた。



「オリヴィアの様子は……?」

「あの子の事は心配いらないよ。 今度パーティーにあの子も連れて行くから、その時は宜しく頼むよ」



そう言うとダグラスは静かに部屋を出て行った。


ドアが閉まった途端、一気に気の抜けたアレンは、ソファーに深く腰掛け安堵の息を零した。


目を瞑ると自然とオリヴィアの顔が浮かぶ。


口では忘れると言ったものの、あの日の事を忘れられる訳がなかった。


ー何故オリヴィアはあんなところに? それにあの時いた男は、確かにエリオット・レッドフォードだった……。ー


頭を悩ませるアレン。


考えない様にしようとする程、あの日の光景が鮮明に浮かぶ。



「……オリヴィア」



オリヴィアの名前を口にすると、胸が締め付けられる。


だがどこか安心できた。


ーあいつは、心の底から笑った事はあるんだろうか?ー


そんな疑問が浮かび、胸が苦しくなった。


その苦しさを抱えたまま、アレンは暫くそこから動く事が出来なかった。





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