† Lの呪縛 †
オリヴィアの反応を微笑ましく見ているのは、ノエルだけではない。


ダグラスとクレアも、愛でる様な眼差しを向けていた。


オリヴィアがレッドフォード家に来て直ぐの頃を考えると、だいぶ心を開く様になっていた。


最初の頃は表情を変える事もしなければ、口を聞こうともしなかった。



「靴に帽子、それからヘアアクセサリー、色々と新しくするといい」

「でも、お父様……」

「普段ワガママを言わないんだから、こういう時くらい楽しみなさい」

「……うん。 あ、ありがとう」



ぎこちなくお礼を言ったオリヴィアの耳は真っ赤だった。


そして恥ずかしそうに微笑んだ。


その笑顔が見れただけで、ダグラスは十分だった。



「ふふっ、良かったわね、オリヴィア」



クレアの慈愛に満ちた温もりに触れる度、オリヴィアは実母シャロンの事を思い出す。



「仕立ててもらったドレスを着たオリヴィアを見るのが、今から楽しみだよ」



ノエルの甘やかす様な優しさに触れる度、唯一の友であり、兄の様な存在だったキースを思い出す。



「私も楽しみにしているよ」



だが、ダグラスの優しさ、温もりに触れる度、戸惑い、どうすればいいのか分からなくなる。


オリヴィアは実父を知らない。


見た事も言葉を交わした事もない。


シャロンが語ろうとはしなかったし、自ら聞く事もしなかった。





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