† Lの呪縛 †
テーブルを挟んで向かい合う椅子が二つ。


そのうちの一つは今ではネヴィルの定位置となっている。


だがそれも今日で最後。


シャロンは一人で歩むことを決意したから。



「ねぇ、ネヴィル」



シャロンは腰に巻いたエプロンで手を拭きながら、座っているネヴィルに近付いた。


そしてネヴィルの頬にそっと触れ、微笑んだ。



「最後にお願いがあるんだけど……」

「何だ」

「抱きしめて欲しいの」



珍しく暖かな日差しが差し込む部屋。


更に暖かみが増す。


ネヴィルの腕の中におさまったシャロンは、ネヴィルの背中に腕を回し、ギュッと抱きついた。



「いつも思うけど、やっぱりズルい」

「何が?」

「私ばかりがドキドキしてるわ。 私の心臓の音だけが貴方に届いてる」

「悪魔には心がない」

「それならどうして私と一緒にいてくれたの? 心があるからでしょう?」



シャロンは顔を上げ、ネヴィルの顔を見上げた。


楽しそうに笑っている。






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