† Lの呪縛 †
____……。



「うわぁ~海が見えて来たよ!」

「あはは、はしゃぐ気持ちは分かるけど、おでこが赤くなってしまうよ」



窓ガラスにおでこをくっつけ、馬車の中から外を眺めるオリヴィア。


ノエルは笑いながら声をかけた。


オリヴィアは「分かってる」と返事をしながらも、一向に窓ガラスから離れる様子はなかった。


子供の様にはしゃぐオリヴィアをノエルは愛しそうに見つめている。


そんな二人の姿をレッドフォード伯爵夫妻は微笑ましく思っていた。


暫くはギクシャクしていたオリヴィアとノエルだが、あの日を境に仲は元通りになっていた。


元通りどころか、以前よりも仲が深まっているようにも思える。



「オリヴィア」

「はぁい」



漸く窓ガラスからおでこを離したオリヴィアは綺麗に座りなおした。


それでも視線はまだ窓の外に向けられている。



「やっぱり赤くなってる」

「嘘!? ヤダっ」



オリヴィアは慌てて前髪を整え、ノエルの方へ顔を向けた。



「赤いの隠れてる?」

「うん、大丈夫。 いつものオリヴィアだよ」

「ふふ、良かった」



穏やかな空気が流れる中、馬車がゆっくりと動きを止めた。






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