† Lの呪縛 †
二人は心配そうな表情を浮かべていたが、両手でカップを持ち、少しずつ紅茶を飲むオリヴィアの様子に、自然と口元を綻ばせていた。


オリヴィアがレッドフォード家に来てすぐの頃には、考えられない光景だ。


この穏やかな時間が続けばいいと、誰しもが思った。


だがオリヴィアだけは違う。


オリヴィアの求める穏やかな時間はここには存在しない。


望んでいる穏やかで平和な時間は、もう訪れる事はないとさえ思っている。



「そうだわ! シンシアからお茶会のお誘いを頂いているんだけど、オリヴィアも一緒に行きましょう」

「……私も?」



オリヴィアは目を丸くして驚いている。


そんな様子を気にする事なく、クレアは楽しそうに笑っている。



「我が家に来てからまだ一度も外へお出掛けしていないでしょう? そろそろ外へお出掛けしてみるのも、いいと思うのよね」

「お母様、僕はまだ早いと思います」

「何を言うのよ。 オリヴィアはもう十六なのよ? 家から出てお友達をつくって、お洒落をして、そして恋をするべきだわ」



恋……その言葉にノエルの片眉はピクリと動いた。


二人に気付かれない程度に。





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