天使の歌
「……あ……あぁぁっ!!」
叫びながら、セティは必死にディリーの腕を掴む。
何とか引き剥がそうとしたが、弱ったセティの力では、彼女の腕は ぴくりとも動かなかった。
(……苦、しい……。)
目を ぎゅっと瞑り、苦痛に耐える。
息が出来ない。
頭が、胸が、腹が――躰中が痛い。
(……離、し……て……。)
必死に願うセティの喉に、熱い何かが込み上げる。
「……うっ……がはっ……!!」
セティの口から吐き出された血が、ディリーの頬に僅かに飛んだ。
「…………っ。」
躰に、力が入らない。
抵抗するのを止めたセティの鼻から、血が流れる。
それは頬を伝い、ベッドを赤く汚した。
それを見て、ふてぶてしく笑っていたディリーは、慌てて手を離した。
「……やり過ぎたわ。あんたの躰って、ちょっと神力を送っただけで、直ぐ狂うんだもの。」
その謝罪に、セティは答えられない。
口から溢れ出る血が、喉に逆流しないよう、ディリーは彼の躰を、俯せにした。
「……っ……っ……。」
ひゅーひゅーと喉を鳴らし、セティは必死に呼吸を した。