天使の歌

その瞬間。

じゅうっと、何かが焼けるような音が して。

「痛っ!!」

リエティーがセティの手首を離して仰け反った。

「何っ!?」

リエティーが自分の手首を見た瞬間。

彼女の手首から下が、ぼとりと落ちた。

「きゃっ、きゃああぁぁっ!!」

リエティーが絶叫し、後退る。

セティは肩で息を したまま、顔を上げた。

瞳から流れた血が、床に ぼたぼたと落ちる。

その赤とは また違う色を した紅い瞳が、ぎらぎらと光っていた。

「……っ……っ……。」

苦しげに息を するセティに、キュティは走り寄った。

そして、その躰を、後ろから抱き締めた。

「っ!?」

セティは驚いて、キュティを振り返る。

相手の手首を溶かし、切り離した。

そんなに酷い事を した自分を、キュティは怖がると思っていたのに。

「セティ、苦しい!?大丈夫!?」

キュティは涙を ぽろぽろ零しながら、セティの背中を擦ってくれた。

「……キュ、ティ……。」

「お願い……セティを傷付けないで。見ていられないの。」

キュティは真っ直ぐに、リエティーとディリーを見つめた。

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