天使の歌
悪戯っぽく笑う桜に、キュティは話題転換を試みる。
「……そうだ!お母さんの事、教えてくれませんか!?お母さん、どうして結婚していたのに、天界に?」
訊くと、桜は少し、寂しそうに笑った。
「お母さんはね、アメリカ人だったの。」
「あめりか、じん?」
意味が解らず きょとんと すると、桜は うーんと小首を傾げた。
「私達は日本人。お母さんはアメリカ人。人間は、生まれた場所によって、呼び名が変わるの。」
「へぇ……。」
「呼び名だけじゃなくてね、生活様式や、信じる神さえも変わる。だから、神社に嫁いだ お母さんは、歓迎されなかった。だって、崇める神が違うんですもの。」
(……お母さん。)
お母さんも、周りに認めて貰えなかったんだ……。
「それで、耐えられなくなっちゃったんでしょうね。神崎家に入って、異世界の存在を知った お母さんは、独学で移動(ワープ)みたいな物を覚えて、天界に行っちゃったの。」
「え。」
お母さん、凄い。
でも。
「でも……此処でも、認めて貰えなかった。」
キュティの言葉に、桜は頷く。
「結局、ね。この世界は差別ばっかり。」