天使の歌
「げほっ!!」
堪らず胃液を吐いたセティの頭を、リエティーは横から蹴り飛ばす。
硬い床に頭を打ち付けて、セティの意識が一瞬だけ飛んだ。
「……はっ……ごほっ……。」
起き上がろうと したセティの肩を蹴り、直ぐ様 顔を蹴る。
セティを嬲るリエティーの顔には。
とても楽しそうな、笑顔が浮かんでいた。
頭と腹への衝撃で、背を丸めて咳き込むセティを、スティは冷たい目で見た後、独房の入り口 近くで じっと その光景を見ていたディリーに、声を掛けた。
「ディリー、やれ。」
「でも……スティ様!」
ディリーは、スティとセティを交互に見た。
「お前は、俺に忠誠を誓っただろう。」
「はい、確かに。ですが……。」
「俺の命令が、聞けないのか。」
ディリーは唇を噛んで俯いたが、やがて顔を上げると、頷いた。
「……解りました。」
そうして、ディリーはセティの横に、膝を付いた。
ぜぇぜぇと喉を鳴らすセティを、ディリーは哀しげに見つめた。
「……御免ね……。」
ディリーの囁きは小さくて、恐らくセティしか聞き取れなかっただろう。
ディリーの手が、セティの背に当てられて。
「……がはっ!!」
躰を神力が貫いて、セティは吐血した。