天使の歌
目の前に突っ立ったままのセティの容姿が段々と元に戻って行くのを、キュティは黙って見ていた。
完全に いつもの姿に戻ったセティは、静かに目を開け、ぼんやりとキュティを見つめ。
「!?」
不意に、がばっと抱き付いて来た。
「……え……セティ!?」
「……っ……。」
キュティの顔が、セティの胸に押し付けられる。
微かな――血の匂い。
セティは痛いくらい、強く、強く、キュティを抱き締めた。
どきどきして固まっていたキュティは、その肩が微かに震えているのに気付き、そっと、彼の背に腕を回した。
セティの躰が、びくっと震える。
それでも彼は、キュティを抱き締め続けた。
「……セティ、泣いてるの?」
「…………。」
セティは答えない。
けれど、喰い縛った歯の間から、抑えられない嗚咽が漏れた。
キュティはセティの背を擦る。
「……キュ……ティ……。」
セティは、キュティの頭に、顔を埋める。
「……俺……怖……かっ、た……。」
途切れ途切れの、震えている声。
「……皆が……俺を……化け物みたいに、見るんだ……何千人もの……天使が……皆……俺の死を、望んでる……。」