天使の歌
セティは一瞬、息が詰まった。
地界。
――大好きだよ。
人生に1度切りの体験。
甘酸っぱくて、幸せで。
でも、苦かった……。
結局、自分は独りなんだと改めて思っただけだった。
そう言う体験を、セティは地界で した。
「……行った事が在る、と言ったら……?」
声が掠れている事を、キュティが気付かなければ良いな、と考える。
「どうだったのか、訊きたいの。」
「…………。」
セティが黙っている事には気付かず、キュティは口を開く。
「私、人界に行こうと思った。でも、やっぱり差別されるのかなって……。人界と地界じゃ、全然 違うかも知れないけど……。」
「…………。」
「……セティ?」
キュティは漸く、セティが押し黙っている事に気付く。
「どう、したの?」
「……行きたければ、行けば良い。人の批評を聞いて、辛い目に遭うのを避けるのなら、そんな奴は、只の小心者だ。」
キュティは呆気に取られて、目の前に居る混血(ハーフ)を見つめた。
非難された。
その事は理解 出来るし、内容も最もだと思う。
(……でも。)
どうしてなの?
キュティの事を馬鹿にしている筈なのに、セティの瞳は、辛そうに揺れていた。