天使の歌
キュティを送り出し、彼女が完全に宿の外に出たのを確認し。
セティは直ぐ様、ベッドに身を投げ出した。
「……ぐっ……!」
今迄 押さえ込んで来た、胸の痛み。
それが、独りになった途端、激しく襲って来て、セティは身を丸めて、目を瞑った。
「……あ……ぐ……っ。」
声が漏れるのが抑えられない。
この痛みの理由は、解っている。
心の奥底に燻っている、どす黒い何か。
それが出て来ようと、セティの胸を抉る。
暫く喘ぎ、セティは がばっと起き上がると、洗面所へ走った。
「……はっ……げほっ!」
白い流しに、赤い雫が ぼたぼたと落ちる。
ぜぇぜぇと喉を鳴らし、セティは吐き続けた。
キュティが帰って来る前に、治まってくれと願いながら。