天使の歌
「……ティ……聞い…くれ……。」
セティの必死の頼みに、キュティは恐怖を我慢して、彼の顔に耳を近付けた。
「あい…から、離…ろ……。」
「あいつって……ディリーさんの事?」
セティは頷く。
「どうして?」
「……俺達は……命を狙わ…てい……だ。誰も、信用…るな……。」
「ディリーさんが、私達を迫害するって言いたいの?」
「……そ…とは断言 出来な…が……。」
「何よ、それ。」
自分の物じゃないかのような、冷たい声。
キュティの中に、得体の知れない、どす黒い何かが生まれる。
「ディリーさんは、貴方に殺され掛けた私を、助けてくれたんだよ?なのに、信用するなって言うの!?我を忘れて仲間を殺そうとするような人の言葉なんか、信用 出来ない!!」
叫ぶと、セティは顔を歪めた。
解っている。
セティでも、どうしようも無かったのだと解ってはいたが、命の恩人を疑う事は、キュティには出来なかった。
その時。
「どうかしたの?」
ガチャッと音が し、ディリーが部屋に入って来た。
「……っ……。」
その瞬間に、セティは胸を押さえて喘いだ。