天使の歌

「……あっ……。」

苦痛に顔を歪めて、セティは背を丸め。

「……がっ……あぁっ……。」

口から、大量の血を吐き出した。

キュティは咄嗟に、ディリーの元へ走り寄る。

また、セティが暴走して、自分に襲い掛かって来たら、怖い。

しかしセティは前とは違い、必死に呼吸を しながら吐血するのみだった。

「……っ……げほっ……。」

「セティ……。」

その、余りに悲惨な姿に耐えられなくなり、セティに近付いたキュティの腕を、ディリーが掴んだ。

「暴走じゃないと思うけど……あたしが行く。あんたは此処に。」

「……はい。」

キュティは暫し躊躇い、頷く。

それを見て、ディリーはセティに歩み寄った。

「……来……るな……っ。」

必死に拒否する彼の背に、労るように手を添える。

「……て、めェ……。」

セティは血を吐きながらもディリーを睨み。

次いで、キュティを見た。

「……忘れるな。」

セティの蒼と紅の瞳が、キュティを真っ直ぐに見つめる。

「信じる優しさと、疑う強さ。俺達には、それが必要なんだ。」

そしてセティは気絶し、ディリーの肩に ぐったりと顔を埋めた。

< 99 / 237 >

この作品をシェア

pagetop