天使の歌
「……あっ……。」
苦痛に顔を歪めて、セティは背を丸め。
「……がっ……あぁっ……。」
口から、大量の血を吐き出した。
キュティは咄嗟に、ディリーの元へ走り寄る。
また、セティが暴走して、自分に襲い掛かって来たら、怖い。
しかしセティは前とは違い、必死に呼吸を しながら吐血するのみだった。
「……っ……げほっ……。」
「セティ……。」
その、余りに悲惨な姿に耐えられなくなり、セティに近付いたキュティの腕を、ディリーが掴んだ。
「暴走じゃないと思うけど……あたしが行く。あんたは此処に。」
「……はい。」
キュティは暫し躊躇い、頷く。
それを見て、ディリーはセティに歩み寄った。
「……来……るな……っ。」
必死に拒否する彼の背に、労るように手を添える。
「……て、めェ……。」
セティは血を吐きながらもディリーを睨み。
次いで、キュティを見た。
「……忘れるな。」
セティの蒼と紅の瞳が、キュティを真っ直ぐに見つめる。
「信じる優しさと、疑う強さ。俺達には、それが必要なんだ。」
そしてセティは気絶し、ディリーの肩に ぐったりと顔を埋めた。