ナピュレの恋【完】

「ゆ、うや…。裕也、なんだよね…?」


なつこは俺を見ようと体を捩(ヨジ)ったんだけど…。


俺は、なつこの反応が怖くて腕を弱めることが出来なかった…。


情けないな…。


そんななつこは、徐々に力を弱め抱きしめる俺の腕を“ギュッ”と抱きしめてくれた。


「なつこ…ツライ思いさせたね…。俺が悪かった…ごめんね」


抱きしめたまま、声を掛けると。


「探しに、来てくれたの…?」


呟くような声で聞いてきた。


「うん。でもチケットをくれたのは、貴子さん」


「え、貴子?」


「うん。本当は今日貴子さんが来る予定だったんだ。だけど、俺がなつこの会社を訪ねて。なつこの居場所を聞き出したんだ。そしたら、チケット渡してくれたんだ」


そう、本来は貴子さんがなつこの元に来る予定だった。


けれど、それを俺に託してくれた貴子さん。
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