紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
「だぁぁ、疲れた……!」
オーランドはトラファルガー広場のベンチにどかりと腰を降ろす。
コートニーはそのすぐ横に寄り添った。
さっきから、体の震えが止まらないらしい。
今日も適当ではあるがパンクなオーランドと完璧ゴスロリなコートニーは、観光客の視線を集めていた。
「今日は、人、多いな。ちょうど、ええわ」
「……見つからないかしら……」
「さあ。でも、これだけ人がおったら、なかなか、手出し、できへんや、ろ」
オーランドは切れ切れの息で答える。
なんとかそれを整えると、オーランドはコートニーを見つめる。
「あのおねーさん、知り合いなんやな?」
それだけ聞くと、コートニーはびくりと体を震わせ……やがて、こくりとうなずいた。
「誰や?」
努めて穏やかに聞くと、コートニーは小さな声で答える。
「ナンシー」
と。
やっぱり……とオーランドは思う。
「ナンシーってのは……死者を作ってる錬金術師やったな」
「そう」
「……迎えに来たみたいやけど」
「うん……どうしよう……
まさか、あなたのアパートがバレるなんて」
「昨日の黒い魔法陣を作った主だったんかもしれんな。
あれに突っ込んだせいで、気配をつかまれてしまったんかもしれん」
そうだとしたら、ナンシーは強い力の持ち主だ。
一瞬だけ接触した者の気配を追えるなんて……。
オーランドは考え込みかけ、やめた。
ナンシーが現れた原因を考えたって、事態は良くならない。