紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~


「コートニー」


「…………」


「このまま僕にまで素性を隠したまま、逃げきれると思うか?」


コートニーはうつむいたまま、首を横に振る。


そのとき、突然オーランドの右手がびくりとはねた。


「……ッ!」


皮膚の下で血管が蛇のようにうねり、筋肉がボコボコと盛り上がってへこんでを繰り返す。


激痛を伴うその腕の変化に、オーランドは歯を食いしばった。


汗が噴き出す左手で、なんとか抑えようと右手をつかむ。


「オーランド!大丈夫?」


コートニーが心配そうにのぞきこむ。


オーランドは無言でうなずき、右腕が静かになるのをひたすら待った。


「…ッ、はあ……」


やっと落ち着くと、オーランドは大きく息を吐く。


「オーランド……あなた、手をどうしたの?」


「さあ……僕にもわからんけど、多分昨日黒魔法に突っ込んだせいで、中のもんが目覚めてしまったんかもしれん」


そして、きっとナンシーの強い魔力に反応している。


オーランドはなんとなく、そう感じた。


「中のもの……この腕の中に、何がいるって言うの?」


触れようとしたコートニーの手を、オーランドは優しくにぎって阻止する。


そのまま、彼女のブラウンの瞳を見つめ、オーランドは静かに言った。


自分ももう、彼女に隠し事はできない。


たとえ、怖がられ、嫌われたとしても。



「……この腕の中には、悪魔がおるんや」


< 104 / 276 >

この作品をシェア

pagetop