紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
「コートニー」
「…………」
「このまま僕にまで素性を隠したまま、逃げきれると思うか?」
コートニーはうつむいたまま、首を横に振る。
そのとき、突然オーランドの右手がびくりとはねた。
「……ッ!」
皮膚の下で血管が蛇のようにうねり、筋肉がボコボコと盛り上がってへこんでを繰り返す。
激痛を伴うその腕の変化に、オーランドは歯を食いしばった。
汗が噴き出す左手で、なんとか抑えようと右手をつかむ。
「オーランド!大丈夫?」
コートニーが心配そうにのぞきこむ。
オーランドは無言でうなずき、右腕が静かになるのをひたすら待った。
「…ッ、はあ……」
やっと落ち着くと、オーランドは大きく息を吐く。
「オーランド……あなた、手をどうしたの?」
「さあ……僕にもわからんけど、多分昨日黒魔法に突っ込んだせいで、中のもんが目覚めてしまったんかもしれん」
そして、きっとナンシーの強い魔力に反応している。
オーランドはなんとなく、そう感じた。
「中のもの……この腕の中に、何がいるって言うの?」
触れようとしたコートニーの手を、オーランドは優しくにぎって阻止する。
そのまま、彼女のブラウンの瞳を見つめ、オーランドは静かに言った。
自分ももう、彼女に隠し事はできない。
たとえ、怖がられ、嫌われたとしても。
「……この腕の中には、悪魔がおるんや」