紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
「コートニー……」
「でも私は、白魔法師にも、一般人にも、個人的な恨みはないから」
どんな顔をしていいのかわからないオーランドに、コートニーはきっぱりと言う。
「だから、王族である私の血と、召喚した悪魔の血を掛け合わせてキメラを作るなんてことには、協力したくなかった」
だから逃げ出したのか。
「でも……帰ります。
ほら、これもちゃんと持ってるから……」
白い胸元からちゃらりと取り出されたネックレス。
その先についていたのは……
「ペンタグラム……」
魔法師が使う魔法具の中でも一番オーソドックスなもの。
円の中に逆さまの五芒星が入ったそれは銀色で、妖艶な光を放つ。
(これが、おっさんの言ってた末裔のアイテムか!)
ランスロットは言っていた。
邪悪な血の末裔は、印となる何かを持っていると。
ぼんやり見つめていると、ナンシーがにこりと笑った。
コートニーは彼女の方に歩き、途中でピタリと足を止めてオーランドを振り返る。
ドキリとした。
その赤紫色の瞳が、泣いているように見えたから。
「オーランド……」
「…………」
「私がキメラになって、あなたの前に現れたら……
きっと、息の根を止めてね。
あなたの右手で。
お願いよ」
コートニーはすぐにナンシーに向き直る。
「……あかん……!」
オーランドは思わず、その左手をつかんだ。
ぼんやりしている場合じゃない。
色々、受け止めきれないこともあるけれど。
「行かすわけにはいかん」