紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
「子供の白魔法師がいくらいようと、同じこと」
ナンシーは魔法陣から、何人もの死者を呼び出す。
「若い力をなめんなよ、おばさん!」
クライドが火の精霊とともに前に立つと、ナンシーの口元がひくひくと歪んだ。
「おい黒魔法師、new死者の弱点はどこだ?」
フェイがコートニーに聞く。
その視線は冷たく、コートニーは自分が信用されてないことを思い知る。
「わからない……アレが生まれた時点では、私はもうナンシーの元から逃げ出してたもの。
でも、たぶん……」
「早く言いなさいよ。
嘘をついたら、ただじゃおかない」
アリスが口をはさむ。
彼女もまた、フェイと同じ目をしていた。
「……首を切り落とせば、動きは止まるはず。
ナンシーは死者の脳の代わりに、魔法具を頭に入れているはずだから」
「頭か……」
「仕様が変わってるかもしれないけどね」
「やってみればわかるわ」
フェイとアリスも、クライドに続いて死者たちに向かい合った。
すぐに魔法陣を呼び出し、臨戦態勢に入った男二人の後ろで、アリスが振り返る。
「オーランドに何かしたら、許さないから」
倒れているオーランドにコートニーが近づこうとしたのが、気に入らなかったらしい。
「……なにもしないわ」
コートニーはオーランドの横で、ひざをついた。
その顔はまだ苦痛にゆがんでいる。
いっそ、意識をなくしてしまった方が楽なのに。
でもここで何かしたら、白魔法師たちに自分が攻撃されてしまう。
(ああ……)
こんなに近いのに、あなたが遠い。
(やっぱり私たちは、近づいちゃいけなかった)
コートニーは唇をかみ、オーランドの右手をにぎった。
(悪魔よ、どうかおとなしくして……)
彼女は白魔法師たちに見つからないよう、静かに祈った。