紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
ナンシーは答えなかった。
代わりに、コートニーとオーランドの足元に魔法陣を呼び出す。
「寄り道はここまでです」
また飲み込まれてしまう。
二人がナンシーを見上げた、そのときだった。
足元の魔法陣の下の地面が、急に盛り上がった。
「なに……っ?」
コートニーの悲鳴混じりの質問を突き刺すのは、地面から生えた尖った柱。
それは、ナンシーの魔法陣を貫く。
「コートニー!早くそこから出るんだ!」
聞こえてきたキイキイ声に、コートニーは後ろを振り返る。
そこには、相棒のシド、それにオーランドの仲間のフェイ。
彼が陸の魔法を使ったおかげか、ナンシーの魔法陣の力が弱まる。
そこへ、左右からも手が差し伸べられた。
「オーランド!しっかり!」
「クライド……アリス……」
オーランドの体を支えた二人は、魔法陣の外へ。
コートニーも慌ててそれに続いた。
「シド!あなた最高だわ!」
コートニーはシドを抱き上げた。
シドはなんとか組織の人間に接触し、オーランドとコートニーの所持品で、二人の気配を探ってここまで来たのだ。
「大変だったんだからな!
駅の移動魔法陣まで、人間の乗り物につかまって、やっと組織のアジトにたどり着いたと思ったら、精霊たちに見つかって毛をむしられた!」
見れば、シドのミルクティー色の毛のところどころが抜かれていた。