紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
アリスは感情のままに叫んだ。
コートニーは言葉を失い、オーランドに触れようとした手も動かなくなってしまった。
たしかに、彼を巻き込んでしまったのは、自分だ。
自分さえ彼に近づいていなければ、ナンシーも、そしてあの恐ろしい男も、オーランドの存在に気付かなかった……彼が悪魔とのキメラだということを、知られずに済んだのかもしれない。
「……そんなこと、言うなや。
コートニーがクマくんに頼んでくれたおかげで、僕は助かったわけやから」
「オーランド……」
「もちろん、助けてくれたのは、キミらや。
ありがとう」
ぺこりと頭を下げられ、白魔法師たちは口をつぐんだ。
「どっちにしろ、彼女を野放しにするわけにはいかない。
あの男の正体、企てなど、全て騎士団の前で話してもらわなくては」
フェイがアリスをなだめるように言う。
「それに、その女があっちに渡ってしまうと、よくないだろ。
そんな感じだったじゃないか」
クライドも珍しくアリスの機嫌を取るように優しく話し、まだふらふらしているオーランドに手を貸した。
……その女、だって。
もう、名前すら呼んでもらえないのね。
コートニーは、ため息をつきそうになったのをこらえる。
最初から、この人たちが敵だということはわかっていた。
仲良くしたいとも思わない。
だけど。
静かになった丘の上、陽光をはらんだような金髪が、風に揺れる。
(あなたも、私を嫌いになるの?)