紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
「コートニー、君はどうするの?
白魔法師に切り刻まれるくらいなら、僕の花嫁になるほうがずっといいと思うんだけど?」
革でできたグローブをはめた手を、コートニーは拒絶する。
「……嫌よ」
「つれないな。そこがいいんだけど。
じゃあ、白魔法師に見切りをつけたら帰っておいで。
彼らに失望するまで、そんなに時間はかからないだろう」
プリンスは微笑む。
天使のような、悪魔の笑顔で。
「そいつらに何かされそうになったら、すぐに連絡しておいで。
君のためなら、いつでも迎えに行くからね」
プリンスはそう言うと、魔法陣を呼び出す。
そしてその中へ、ナンシーと共に消えていった。
「…………」
見逃された。
コートニーは、だだをこねた子供のような感覚に陥る。
自由を認められたようでいても、結局自分はあいつの手の内なんだ……
すぐに飽きて帰ってくるだろうと思われているんだろう。
「……はぁ……」
オーランドの息を吐く声で、我に返る。
どうやら、黒魔法や悪魔の影響が薄れたおかげで、右腕はおとなしくなったようだ。
「大丈夫?」
オーランドに触れようとしたコートニーの手が、ぱしんと叩かれた。
アリスだ。
「触らないでよ、黒魔女!」
「……は」
「あんたのせいで、オーランドは傷ついたんでしょ!?
一緒に行けば良かったのよ。
あんたの居場所なんか、どこにもないんだから!」