紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
「あいつらが『死者』だって、知ってるのね」
コートニーは男に詰め寄る。
「死んでるのに動きよる。
だから正しくは『リビングデッド』、かっこ悪く言えば『ゾンビ』やな」
男は何でもないふうに答える。
そして、コートニーを見つめた。
「……で、なんでキミは『死者』に襲われてたん?
しかもやつらが『死者』だってことを理解しているということは……
一般人ちゃうやろ、自分。何者や」
口元は優しく笑っているが、青い瞳はコートニーの心中を見透かそうとしている。
コートニーはその目をまっすぐに見返して、言い返した。
「通りすがりよ」
すると男はふっと笑う。相変わらず、口だけで。
「あんな、僕は『死者』を見つけたら退治するようにエライ人に言われてるんや。
キミが死者に襲われる理由があるなら、僕は敵じゃないやろ?
やから正直に話してほしい。
僕なら、キミを保護する場所を紹介することもできる」
「自分の名も名乗らない人に、何を話せと?」
「……ほんま、気ぃ強い、お嬢ちゃんやなあ」