紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
「……そんな緊張せんでも、大丈夫やから」
普段なら笑ってしまうだろうけど、何故か今夜はそんな気になれなかった。
ただ、絶対にこちらを向こうとしないコートニーが愛しかった。
「なんもせんよ。大丈夫」
「……ごめんなさい……」
「大丈夫。なんも謝ることない。
なんなら僕、ソファで寝るし」
「それはダメ!」
コートニーはくるりと、体の向きを変えた。
真っ赤で、目に涙を溜めたコートニーは、必死に訴える。
「そばにいて。
ものすごく矛盾してるのは、わかっているんだけど、その、あの……」
「うん」
「だ、だ、抱っこだけお願いしても、いい……?」
ああ、もう。
オーランドはコートニーを、ぎゅっと抱きしめた。
それ以上する気がないことが伝わったのか、震えはいつの間にかおさまる。
「ありがと……」
小さな声が聞こえる。
オーランドはその額に、キスを落とした。
これくらいは、許されるだろう。
「おやすみ、コートニー」
彼女はうなずき、まぶたを閉じる。すると自分にも睡魔が襲ってきた。
コートニーの体はあたたかくて、やわらかくて……
こんなに優しい気持ちで心が満たされることがあるのだと、実感させてくれた。