紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~


「これは……」


クライドはそれをにぎりしめ、奥歯を噛んだ。


そのリングを捨てるということは、組織や騎士団の白魔術で閉ざされた扉を開けることはできなくなる。


それが意味するのは、彼らとの完全な決別。


「お父ちゃんや兄貴には苦労かけるかもしれんけど、ごめんなって謝っといてくれ」


「オーランド……」


「悪魔食い(デモノイーター)に、正体不明(アンノウン)。

僕が騎士団に陰で何て言われても、お前たちは仲間でいてくれた。

感謝してる」


オーランドはにこりと笑う。

その表情には寂しさが一瞬さまよったようにコートニーには見えた。


「殺さないでいてくれただけでも、騎士団は優しかったんかもしれん。

けど、僕はあのとき受けた拷問も、何かあるたびに脅され続けたことも、忘れられん。

『ああ、僕はいらん子なんや』って……あの時のあきらめが、ずっとついてまわるのは、もうごめんや」


オーランドは、コートニーとつないだ手に、力をこめる。


そして、真面目な顔できっぱりと言った。



「僕は、ここを離れる。

コートニーと一緒に」


「……その女の血が、この世で最もけがれているとしてもか」


フェイがさげすむように、コートニーを見る。


「あっほやなあ、フェイ。

この唇見てみ?ほっぺた見てみ?

俺らとおんなじ、赤い血が通ってる証拠やないか。

血に穢れてるも穢れてないも、そんなもんあるか!

大事なのはハートやっちゅうねん!」




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