紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
「人が多い。あっちへ」
フェイは誰も通らない、立入禁止区域の看板の方を指さす。
「……やる気まんまんやないか。
騎士団に、僕を殺せとでも言われて来たんか?」
オーランドは顔だけは笑ったまま、フェイにたずねる。
「こんなところじゃ、落ち着いて話もできないだろ?」
クライドが口をはさむ。
「昨夜、すでにお前たちがいなくなったのには気づいてたんだ。
でも、朝になったら戻ってきてくれると信じてた。
オーランド……組織や騎士団を本気で裏切る気か?」
彼の顔は、悲しそうに歪んでいる。
その様子に押され、オーランドは仕方なく、彼らに誘導されるまま、人気のない場所へと移動した。
もちろんその間も、コートニーの手を放すことはなかった。
「オーランド、お前が何を考えてんのか、わかんねえよ」
一番先に口を開いたのは、クライドだった。
「その女が変な魔術をオーランドにかけたとしか、思えねえ。
正気の沙汰じゃねえよ」
「悪いけど、なんもかけられてないで。
僕は僕の意思で、組織と騎士団を離れようと思ったんや」
「どうして……」
「実験台として扱われるのは、もううんざりやから」
オーランドはポケットから何かを取り出し、クライドに投げる。
太陽の光を反射し、オーランドの髪と同じ色に光ったそれは、騎士団が彼の中の悪魔の力を制御するために与えた、アーマーリングだった。