紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
「あっかーん、絶対絶命や」
オーランドは額をたたく。
追手の中には、彼の兄もいた。
「オーランド!この恥さらしが!
俺が直々に相手をしてやるわコラァ!」
額に青筋を立て、腕まくりまでしたアーロンが、ずんずんと前に進み出てくる。
「あかんって、なあ、平和に話あおう、な」
「じゃかあしい!お前なぞ切り刻んで、パーツごとにホルマリン漬けにしてやるわ!」
「……ナンシーと趣味があいそうね、あなたのお兄さん」
「そうなんよ、変態やから」
思わず言うコートニーに、オーランドは笑って返す。
そして強がりを言いながらも震える彼女の腰を左手で抱き、指輪を捨てた右手を、白魔法師たちに見せつけた。
「あんまりひどいこと言うと、僕やなくてこの中の悪魔が、我慢できんようなるで!」
ひらひらとその手を振ると、白魔法師たちは、一瞬ひるむ。
なにせ、精霊も見えないのに悪魔を吸収してしまったというオーランドの能力は、彼らの間では有名だからだ。
そして、指輪をしていないことで、何が起こるか誰にもわからない。
「……今まで情けをかけてやったというのに……」
ランスロットの眉間に深いシワが寄っている。
「やからな、それが余計やっちゅうねん。
僕が欲しかったんは、そんな情けやない。
悪魔としてスッキリきれいに処分されるか……人として、愛されるか。
どっちかやったんや……」