紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~


……やっぱり、こうなっちゃった。


コートニーはぼんやりと、何もない部屋を眺めていた。


ナンシーにとらわれていた頃は、カートの趣味もあって、なぜかロココ調の家具がそろった豪奢な部屋に軟禁されていた。


(本当の牢獄って、こういうものなのね)


そんなどうでもいいことを考えないと、すぐにでも泣いてしまいそうだった。


シドが、自分を守って灰になり、消えてしまった。


彼は自分が生まれたときに祖母が召喚してくれた悪魔だった。


ずっと一緒で、ナンシーに捕われてからも、彼がいたから寂しさに負けることはなかった。


なのに……。


(オーランドは、どうなっちゃったのかしら)


彼もまた、自分のせいで窮地に立たされているに違いない。


最後に見たのは、傷だらけのまま仲間に連れていかれた、彼の姿だった。


騎士団長がフェミニストなおかげか、コートニーは少し怪我をしただけで、手錠も縄もかけられていない。


その代り、胸につけていたペンタグラムは見つかって、没収されてしまった。


「入るわよ」


突然声が聞こえて、扉が開いた。


足音も聞こえないくらいぼんやりしていたんだ。


コートニーはそんなことを思いながら、声の主に視線をやる。


それは、アリスだった。


「着替えなさい」


アリスはコートニーに服を投げつける。


それは、オーランドのアパートに脱ぎ捨てていったコルセットと、黒いドレス。


意味がわからず見上げたコートニーに、アリスは淡々と言い放つ。


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