紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
「魔女は魔女らしい姿で、最後を迎えるといいわ」
最後?
「あなたは、白魔法師の面前で処刑されるのよ」
処刑。
「ああ……そう」
なんとなく、わかってはいた。
あまりに長い時間放置されたから、騎士団が自分の処遇を考えているのだろうということ。
あの場で銃口を向けられた自分が、生き残れるはずもないとうことも。
「悪いけど、このままでいいわ」
コートニーはコルセットを放る。
「あんたたちのセレモニーに、協力する義理はないもの。
この髪に目があれば、じゅうぶんでしょう?」
その様子に、アリスはいらだった。
「なんて面の皮が厚いのかしら」
「ほめていただいて、どうもありがとう。
私はこれを、絶対に脱がないわ」
コートニーはそう言って、肩が出るほど大きなTシャツを体ごと抱きしめた。
ふわりと香っていたオーランドの香水の匂いは、だいぶ薄れてしまっている。
それでもいい。
死ぬのがなんだって言うの?
これから生きていたって、苦しみ続けるだけ。
オーランドが、自分を選んでくれた。
一緒に逃げようと言ってくれた。
私は彼の中に、存在し続けるだろう。
それだけで、じゅうぶんだった。
誰一人自分を大事にしてくれなくても。
彼が、自分の手を引いてくれた。
キスをしてくれた。
抱きしめて眠ってくれたんだ。
こんなにも穢れている、醜いと言われ続けた弱い自分を、可愛いと、好きだと言ってくれた。
それだけでじゅうぶん。