紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
──すぱーん‼
コートニーは、青と赤の間をいったりきたりしているオーランドの後頭部を、思い切りひっぱたいた。
「なっ、なにすんねん!」
オーランドは、スカイブルーの瞳に戻る。
「あんたねえ、先に私と契約したでしょっ?
キスしたわよね?
あんなやつに仕えたいなんて、許さないんだからっ!」
コートニーはオーランドの意識に届くように、できる限り大声を張り上げる。
「私の言うこと聞きなさい!」
「……でも」
「おだまりっ!」
一喝すると、オーランドの瞳のブルーが濃くなった。
その瞬間、コートニーはオーランドの襟首をつかみ、怒鳴る。
「プリンセス・コートニーの名において、あなたの中の悪魔に命じるわ!
私から離れることは、絶対に、絶対に、許さない!」
「コートニー……」
「契約の代償に、私の全部をあげるわ!
髪も目も肉も王族の血も、あなたのものよ」
長いまつげに縁どられたまぶたを閉じる。
そして、オーランドに噛みつくようにキスをした。
「まあ」
ナンシーが思わず声をあげる。
長い口づけのあと、コートニーは「ぷはあ」と息をついた。
「どう?」
コートニーに問われ、オーランドはしばらくぼんやりしていたが、やがてにこりといつもの笑顔で笑った。
「そんな素敵な代償がもらえるんやったら、言うこと聞かんわけにはいかんやろ」