紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~


──すぱーん‼


コートニーは、青と赤の間をいったりきたりしているオーランドの後頭部を、思い切りひっぱたいた。


「なっ、なにすんねん!」


オーランドは、スカイブルーの瞳に戻る。


「あんたねえ、先に私と契約したでしょっ?

キスしたわよね?

あんなやつに仕えたいなんて、許さないんだからっ!」


コートニーはオーランドの意識に届くように、できる限り大声を張り上げる。


「私の言うこと聞きなさい!」


「……でも」


「おだまりっ!」


一喝すると、オーランドの瞳のブルーが濃くなった。


その瞬間、コートニーはオーランドの襟首をつかみ、怒鳴る。


「プリンセス・コートニーの名において、あなたの中の悪魔に命じるわ!

私から離れることは、絶対に、絶対に、許さない!」


「コートニー……」


「契約の代償に、私の全部をあげるわ!

髪も目も肉も王族の血も、あなたのものよ」


長いまつげに縁どられたまぶたを閉じる。


そして、オーランドに噛みつくようにキスをした。


「まあ」


ナンシーが思わず声をあげる。


長い口づけのあと、コートニーは「ぷはあ」と息をついた。


「どう?」


コートニーに問われ、オーランドはしばらくぼんやりしていたが、やがてにこりといつもの笑顔で笑った。


「そんな素敵な代償がもらえるんやったら、言うこと聞かんわけにはいかんやろ」





< 194 / 276 >

この作品をシェア

pagetop