紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
「クライドー。余裕みたいやんけ」
オーランドが声をかけると、クライドは鬼の形相で振り返った。
「余裕じゃねえよ!
騎士団のやつら、この展望通路を壊さずに死者を倒せって言うんだぜ!?
ここで死者を見つけたくせに、自分たちは人払いだけして、戦闘は俺たちにやらせようってんだ。
マジ卑怯なやつらだぜ!」
クライドは泣きそうな声で言った。
どんな世界でも、下請けは辛い。
たしかに展望通路を破損すれば、その瓦礫は直下の橋へまっさかさま。
跳ね橋が上がっている間はいいだろうが、今は橋は下がっていて、その上には人や車が通行している。
けが人が出ることは間違いない。
「はあ……そら大変やなあ」
騎士団は自分たちに責任が及ぶことを恐れているらしい。
戦闘向けの幹部が、エジプトに行ってしまっているというのもあるのかもしれないが……。
「っていうか、なんでこんなところに死者が?」
「しらねえよ!
観光客でも狙ったんじゃねえのか!?」
まさか、とオーランドは思う。
今回の敵が、そんな目立つことをするだろうか?
ついに、自分たちの存在を世間に知らしめたくなったのか?
(いや、もしかしたら)
わざと人気のある場所に出現して、騎士団や組織の人間が自由に動けないことを狙っているのか?
(どっちにしても、好かん)
オーランドはひらりと跳躍し、展望通路の手すりに着地した。
それは観光客が落下しないように、少し高くなっている。