紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
「オーランド、危ないわ!降りてきなさい!」
アリスがまるで母親のような口調で言う。
オーランドはアリスのそういうところが、少し苦手だった。
「大丈夫やって!ほなクライド、僕はアッチ側から責めるわ!」
そう言うとオーランドは誰の返事も待たず、手すりの上をタタタタと軽やかに移動する。
「お、おいっ!降りろ!一般人に見つかる!」
クライドが叫ぶが、オーランドはそれを無視して通路の端へ向かう。
「だーいじょうぶやって!ロンドンは心霊スポットも多いことで有名なんやから!」
「バカ!そんなパンクファッションの幽霊がいるかー!」
そうして向こう側まで走ったオーランドは、死者の背後に着地した。
死者の群れに視界は閉ざされ、アリスとクライドが安堵のため息をついたのさえも、オーランドには見えない。
「さあてと……通路を破損したらあかんということは、一体ずつ殴り飛ばすしかないわな」
そう言うと、オーランドは右手に黄金のオーラをまとわせる。
そして、ひとり、またひとりと彼に気づいて振り返り始めた死者の群れに飛び込んだ。
「いーち!」
──ドカッ!
最初に振り向いた死者の頬に一発。
「にーい!」
──バキッ!
近くにいた敵の腹に、一発。
そこからは、怒った死者との乱闘になった。