桜廻る
「こうやって、いつも雅を家まで送ってくれているのかい?心から感謝するよ」
「いや、そうじゃなくて、あの……」
「ほら、遠慮せず家に上がりなさい。君は……。そうだな、抹茶とか和菓子が好きそうだが、悪いが麦茶とポテチくらいしかないんだ。な?雅」
いきなり話を振られる雅。
「ううん、ちゃんと抹茶も和菓子もあるよ」
「そうなのか⁉前はそんなのなかったが、さすがは土方君の彼女だな。彼氏の好きな物をちゃんと把握していて、雅は偉いなぁ!」
嬉しそうに、父は大笑いする。
……大分、興奮しているようだ。
「あの、お父さん!」
落ち着いてほしい一心で、雅は声を張り上げる。
「ん?どうした?」
「え、えっと……。土方さんは、彼氏とかじゃないの。だから、ちゃんと全部話すから。
……で、いいですよね?土方さん」
雅が聞くと、土方はしっかり頷く。
この雰囲気に、父もただ事ではない何かが起こっているんだと、確信した。
「そうか……。分かった。じゃあ、家で詳しく聞かせてくれ」